【21日目・2009年5月3日】
今日が四国最終日。最後のお寺88番札所大窪寺に行って結願(けちがん)する予定だ。結願とは88か寺すべてを参拝し終えることだ。そのあと高野山へ向かうためフェリーで和歌山に渡る。
9寺3分に宿を出発する。87番札所長尾寺までは7Km程、若干の登り傾向だがほぼ平坦でなんなく到着。残すは大窪寺のみになった。
しかし気持ちがお遍路モードになってこない。お遍路モードを表現するのは難しいが、達成感だけではなく、他のお遍路さんとも気軽に話すような雰囲気や、人生について考えてみたり、何かに気づいたり、そういった他の旅行とは違った何かなのだ。
旅を再開してたった3日目で結願するのでお遍路モードになれなかったのかもしれない。何日もお遍路旅を続けて結願するほうがよさそうだ。
大窪寺までは約17Km。最後らしくやや難所だ。標高差400m以上で途中に峠がある。実際には500m近く登るかもしれない。
朝は晴れていたが空全体が曇ってきた。気温24度で暑さを感じないで済む。ひざや足首に少し痛み発生。昨日の激坂の疲れが残っているのだろう。
50分走って大師の水に到着。弘法大師ゆかりの湧き水だ。前回は真夏でこの水に助けられた。そのときは車で水を汲みに来る人がいるほどの人気だった。
さっそく飲んでみようと思ったが傍らにかかっている水質検査書はよれよれ。検査日を見ると平成18年5月だった。通常どのくらいの頻度で検査するのか知らないが、ちょっと不安になってきた。
一口飲むとうまい。結局300mlぐらい飲んでしまった。
今走っている峠道の左側でバイパス工事をやっている。直線的な道ができそうだ。現場を通過するとすぐに道幅が狭くなる。そしてすぐ三本松峠。
この峠はお遍路にまつわるいわれがあるそうで案内版が設置されていた。バイパスが開通するとそういった峠も忘れ去られてしまう。悲しい現実だ。修行する場の遍路道なのだから、峠を回避するのはどうかと思う。
11時54分、大窪寺に到着。特別な感情は湧いてこない。
最後のお寺らしく金剛杖の供養を受け付けている。そうかと思えば初めて納経をする参拝者がいて、どうすればよいか尋ねている姿もあった。
結願を報告するために1番札所霊山寺(りょうぜんじ)に向かった。暫くは吉野川近くまで下っていく。そこから吉野川にほぼ平行して東に進む。
大窪寺からそろそろ30Kmになろうとしている。前半の15Kmぐらいは下りだったとはいえ疲れてきた。向かい風なのも堪える。まだ着かないのだろうか。
一度走っている安心感から霊山寺までの距離を調べなかった。もちろん止まって地図を見ればいいだけだが、もう着くだろうとの思いで走り続けている。
35Kmを過ぎた。足に力が入らなくなってきたが霊山寺がゴールのつもりで力を振り絞った。
聞き覚えがある地名「板野」が現れ、通り過ぎてしまったかと思い地図を確認すると、あと3Km。残りを全力で走りきり14寺46分に到着。
前回も結願して霊山寺に戻ってきた。そこでこれから自転車遍路に出発する学生と話しているうちにもう1周したくなった。今回はそういうこともなく、私の四国遍路はこれで終わった。
徳島から和歌山へ行くフェリーの時刻表を入手。次は16時35分。徳島まで15Kmぐらい、着いたのが14時台だったから充分間に合うだろう。
少しのんきにパンを食べてエネルギー補充。気づけば15時20分になろうとしていた。
慌てて出発したが道を間違わなければまだ余裕がある。コピーしておいた地図を片手に持ちながら走行した。
分かれ道の都度立ちどまって地図を確認し、慎重に進んだ。そのかいあって間違えなかったが、時間の経過の割には進んでいない。
かなり焦ってきた。フェリー出航の何分か前に着いていないといけないだろうからもう余裕はない。フェリー乗り場がゴールのつもりでまたもや全力疾走だ。
港に近づけば近づくほど向かい風が強くなる。フェリー乗り場の案内標識が見えてきた。それに従い進んでいく。もう想定の15Kmは過ぎている。
バイクが何台かかなりのスピードで私を抜いていく。もちろんフェリーに乗るためだ。私は本当に最後の力をふり絞ってゴール。時刻は16時20分。間に合った。メーターは走行距離19Kmを指していた。
二輪、四輪が入り混じった列に並ぶ。私の前の二輪が満車だと断られている。まさか自転車もか。二輪のライダーがそれを受け入れられず抵抗している。それもそうだろう、次の便は19時なのだから。そうこうしているうちに出航時間が迫ってきた。時間切れは勘弁してほしい。
私の番になった。
「自転車ですけど乗れますか」
「申し訳ありません、満車です」
「自転車もですか」
私も抵抗してしまった。もちろんだめで、19時の便決定。力が抜けた。これからどうしよう。誰だフェリーが打撃を受けていると言ったのは。
私の後ろに並んだ10台近くの車は次々とフェリーに乗り込んでいく。そして列がなくなった。係の人が「4輪は空きがあるんですけどね」
打撃を受けているのは本当のようだ。
取り残された20台の二輪車は次の便に乗るためのエリアに移動された。予約できず早いもの順なので二輪車を動かせられない。買い物にも食事にも出かけられず、その場で座り込む人が多かった。
私は宿探しに取り掛かった。到着が21時を過ぎるので、ここで予約しないと大変だ。
和歌山市の観光ガイドを入手してホテルリストを片っ端から電話した。リストの7割ほど電話したがことごとく満室だ。和歌山市はそれほどまでの観光地だったろうか。
それでもなんとか空いているホテルが見つかった。最後の1部屋だった。ホテルの駐車場がいっぱいなので車ありのお客様はずっと断っていた。それで助かった。
5月3日(日) 和歌山 本日の走行距離 90.4Km
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